メディアエステートは司法書士の報酬にも果敢にメスを入れています!
1.「自由報酬」制の歪み
「登記」の手続きは本来、当事者である本人が行なって然るべきもの。
しかし、その手続きについては法規上の知識を要するため、大半の人が弁護士や司法書士に、その代行を
依頼しています。なかでも、係争の物件ではない不動産の登記に関しては、すべて司法書士が行っている
と言っても過言ではありません。
不動産業界も司法書士に頼りっきりで、登記業務を一任している状態。司法書士の出す「報酬を含む登記
費の見積り」には、ほとんどチェックを入れることなく買主に登記費用の見積書を提出しています。
そもそも司法書士の報酬は平成15年4月に日本司法書士会連合会が、それまで同会で定めていた司法
書士の報酬こ対する批判的な世論の高まりを受けて、司法書士の「報酬額基準」を廃止し「公正な競争を
確保する」という立場から、今日の「自由報酬」制を導入したという経緯があります。
しかしながら不動産登記の報酬に関しては、不動産業界の風潮も相侯って高額報酬の見積りを出す司法
書士が依然として多いこともまた事実です。
例えば建売業者の大半は売買の条件の一つに傘下の司法書士事務所を指定しており、その傾向を一層
助長させています。つまり、このことによって当事者である買主は「登記費用」の相見積もりは事実上でき
なくなり、日本司法書士会連合会の規定する「依頼者と司法書士が対等な立場で合意した額」とはなら
ず、また、同会の基本方針である「司法書士は予め依頼しようとする者に対し、報酬額の算定方法そ
の他の報酬の基準を説明する義務を負い、かつ、依頼者に対し、その報酬及び費用の金額又は
算定方法を明示。充分な説明をする」という文言は、ここでは死語になっています。
ことほど左様に、当該の司法書士も「登記費用の見積もり」は総額のみを買主側の不動産業者に通知し
てくるだけで請求をしなければ詳細を明かすことはありません。
2.高額報酬の実態
日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果一覧」
日本司法書士会連合会が平成25年2月に会員2838名に報酬こ関するアンケートを実施しています。
回収したアンケート数は737通に過ぎず、前回、平成20年の回答率の42・78%を大幅に下回る
25.97%と極めて低い回答率になっています。これは前回よりもアンケートの内容が細部に亘った
ということが原因かもしれませんが、この種の業界アンケートとしては極めて低いと言わざるをえません。
アンケートの具体的な内容は示されていませんので、報酬額以外の設問があったかどうかは知る
由もありませんが、回答の低さから同連合会の基本方針である「依頼しようとする者に対する報酬額
の算定方法、その他の「報酬基準を説明する義務」の履行状況まで踏み込んだものだったのではない
かと推測されます。連合会としては基本方針まで踏み込んだアンケートを実施せざるをえなかったはず
ですが、公開されたアンケートの結果には、その記述はどこにもありません。平均的な報酬額のみ記載
されているだけです。ここに、何か不自然なものを感じるのは私共だけなのでしょうか。「臭いものには
蓋をする」、触れたくないもの、触れられたくないものを敢えてアンケートにしなかったか、したとしても
公表できなかったということかも知れませんo
さて、アンケートの結果一覧を見てみましょう。不動産登記関係の「第1、所有権移転登記−2〜4」と「第2
所有権保存登記」「第3抵当権設定登記-1〜2」「第4抵当権抹消登記}「第5所有権移転登記名義人変更
登記」までが不動産に関連する項目で報酬額の多寡の判断基準にもなりますので、参考にして下さい。
報酬額の出し方は、以前と全く変りはありません。
一覧の左から地区ごとに「低額者10%の平均」「全体の平均値」そして「高額者10%の平均」額。
ここで、ちょっと首を傾げたくなるのは、どうして低額者と高額者の、それぞれ10%の人たちの報酬額を
平均した値にしたのかということです。一覧には最低額とその員数、最高額とその員数、そして全体の
平均値。もしくは最多価格帯を出すのが、この種の統計の出し方ではないかと思うのですが、低額者
10%と高額者10%をそれぞれ平均化することによって、読者に与えるショックをいくらかでも和らげたい
という意図が見え隠れします。最低額を公開すると「こんなに安く仕事ができるのに」という利用者の意見
や、最高額だと「ぼったくり」をする会員がいるではないかとの謗りをうけて、かえって混乱を招くという
思惑があるのでしょうか。いづれにしても低額者の平均額と高額者の平均額には相当の隔たりが
あります。
例えば「第1、所有権移転登記−2 売買1」の関東地区の場合、低額者の平均額が2万6025円、
高額者の平均額が8万267円。その差は約5万4千円近く開いており、高額者の平均額は低額者の
平均額の3.08倍です。この格差は首都圏とそうではないところ、都市部と農村部の不動産価格の差に
等しく、所得の格差とはとても思えません。
もし、所有権移転登記の報酬額が不動産価格に比例するものであるならば公表されたこのアンケート
結果には不備があろうというもの。とても素直に受け入れることはできません。
弊社は高額報酬の司法書士事務所との価格交渉の結果をファイルして来店のお客様に公開
していますが、最後に、このアンケートの結果を裏付けるような卑近な例を2件挙げておきます。私共は
埼玉県上尾市を中心に活動している不動産業者ですが、報酬額について売主側の司法書士と応酬
した内容です。
まず、アンケートに記載されていない「登記立会い」の報酬です。「登記立会い」とは、不動産の売買で
引渡し日の、金融機関での金銭の授受である「決済」の場で、司法書士が買主に対して約15分ほど
「本人確認」「不動産物件の確認」「登記手続きの説明」を行い、買主の承認と捺印を得た後、決済の
状況を立ち会って確認する作業です。すべてに要する時間はおよそ60分ほど。この「登記立会い」の
報酬額は、通常、司法書士本人が立ち会って8,000円から9,000円。
ところが高額報酬の見積書を出す司法書士事務所は司法書士本人ではなく、無資格者で従業員で
ある「補助者」がこれを行なって15,000円から27,000円。
弁護士の相談料が30分で5,000円ですので、いかに高いかお分かりでしょう。
その27,000円の「登記立会い」料の見積もりを出した、ある売主側の司法書士は、最初、総額のみ
を通知してきました。こちらが請求してはじめて送ってきた見積書には所有権移転登記の報酬額欄
に「立会い含む」とあって一式64,000円を計上していました。この64,000円の内、立会い料はいくらか、
当の司法書士に尋ねましたが返事がありません。
こちらがたまりかねて「このあたりの所有権移転登記の報酬額が35,000円から37,000円ですので、
37,000円としても登記立会いの報酬が27,000円ということになりますが、これは正直高いですよ。
私共は8,000円から9,000円でやってもらっていますので、これはどうにかなりませんか?」
司法書士:「…‥じゃ端数15,960円を切るということで・‥」
としぶしぶ、こちらの要求に応じてくれました。
また、ある売主側の司法書士は見積明細書を送付してきたものの、中身はとんでもないものでした。
その物件は前面位置指定道路が3筆に分かれていて、それぞれに一定の持分があるため、それらの
所有権も合わせて移転登記を要する案件でしたが、本地の所有権移転登記を除いた報酬額の見積りが、
l筆につき、なんと20,650円。3筆合計で61,950円という法外なもの。
弊社営業:「位置指定道路の、l筆あたりの所有権移転登記の報酬は、私共でお願いしている先生は
一式で15,000円です。だからといって3筆で3倍の一式45,000円の見積りになるかというとそうで
はありません。せいぜい一式で25,000円か30,000円といったところではないですか?それに立会い
料も15,000円は高すぎます。8,000円から9,000円が相場だと思いますが」
司法書士:「いくらだったら…・」
弊社営業:「いいえ結構です。他で頼みますから。」
司法書士:「他で頼んでも金額は同じですよ」
これで私共は「波風を立てる不動産業者」としてレッテルをはられ、直ちに喧伝されてしまうでしょうが、
お客様のことを考えると敢然と立ち向かわざるを得ません。他の司法書士事務所に変えたおかげで、
私共のそのお客様の登記費用が50,000円ほど安くなりました。
こういうふうに文句を言わなければ適正な価格が出せないというのは実に遺憾なことです。大半の司
法書士には「適正価格」ということに対する認識や配慮が欠落していると言わざるをえません。
勿論、これを助長しているのは不動産業界の金銭感覚です。1000万単位あるいは億単位の不動産
物件を扱う者からすると、5万一10万の世界は重箱の隅をっっくようなもので不動産業者は誰も見向き
もしません。だから司法書士の報酬額にクレームをつける不動産業者など、ほとんどいないといって
よいでしょう。
私共のように、そのことで「ムキ」になる不動産業者は他の不動産業者から失笑を買うだけですが、
果たして、これで良いのでしょうか。
司法書士界には「適正価格」に対する認識や配慮を求めたいものです。
更に皆様には「登記費用」の相見積りや減額要求を担当の営業マンに突きつけられることを
お勧めします。
|